2本の木の間、間隔は4〜5メートルといったところ。 この間を、現在、クモが綱渡りをしているのだ。 事の発端は、実は「綱渡りをしていたのだ」という過去形から始まる。 綱渡りをしているところを発見し、左側の木に近い方のクモの糸を戯れに切断してしまったという、クモにとって、甚だ迷惑な話だ。 軽い気持ちで切ってしまったが、落ちたクモ当人はショックだったのか、しばらくの間落ちて茫然自失として動かない。 そして、ふと思い出したかのように、動き出すと、右側の木へ向かって歩き始めた…… 筈だったが、途中からクモが宙に浮かび始めた。 何と、人間が戯れに切った方ではない端は、まだ右側の木についている、そしてクモは、その伝っていた糸を離していない。 つまり、程よく糸が張って、登れるようになると、もはや地上を悠長に歩くなんて真似はしない。 するすると糸を登って右側の木に。 登った後は、しばらくじっとしている。 が、良く見ると、尻を突き出して糸を伸ばしているようだ。 クモが落ちた地点は、実は左側の木に近かったのだが、あえて右側に戻った理由は、そちらに糸がある「風上」だったからだ。 よく見ると、突き出した尻から伸びる糸が、左側の木をめがけて飛んでゆく。 どれくらい時間が経ったか、それほど長くない時間を経て、クモが取った行動は「魚釣り」のようなものだ。 糸の先端がどこかに引っ付いたと思えば、少し引っ張って、本当に引っ付いたのかどうかを確認している。 引っ張った糸が、ピン、と張られた。 どうやら、飛ばした先端がどこかに付いたと判断したのだろう。 クモは、張った糸を伝って移動を始めた。 それが、2枚目の写真という次第。 実は、ピンと張られた1本の糸に対し、右の木に糸の端を結わえ付けてから移動を始めたので、クモが移動した後は「2本」の糸が張られていることになる。 何という、用心深さ! 途中、己が重みでかなり地上すれすれまで糸が伸びてしまったが、これは問題のない範囲なのだろう。 あたかもゴールを知っているかのように、左側の木にたどり着くクモ。 すげぇ! 実際は、更に左にある建物の方にまで糸が伸びていたらしく、それを伝って建物の上の方まで行ってしまった。 もっとすげぇ! 幾何学模様を複雑に織り込んだクモの巣。 あれを見て、もはや芸術の域だと感心するが、実は遠方への移動も、その糸を巧みに操作して行ってしまうクモ。 クモは昆虫の仲間ではないが、「この虫ケラめ!」というのは、誉め言葉じゃないかと思ってしまう。 |