「日教組の活動が盛んな学校ほど子どもの学力が低い」 そう発言した自民党の中川氏が、国土交通大臣を辞任したのは2008年9月28日、わずか5日間という在任期間。 いや、在任期間と呼ぶに相応しいかどうかすら疑わしい。 ところで、先生の集団である日教組が活動していると学力が低いのか? ひとまず、日教組のホームページ(http://www.jtu-net.or.jp/) を覗いてみよう。 ああ、さすがに先生の集まりが作るページだ。 親子で学べる算数教室などがある。何だか、タイトルが怪しいが気にせず読み進めてみることにする。 割合の計算が出来ない子供が多いかどうかは知らないが、意外とこういう事が苦手な人も少なくない。 「ニコニコ」だの「ドキドキ」という言葉を使った教材は、さすが先生というべきか。 人口密度の計算だ。 しかし、算数の問題なのに「人口密度って知ってる?」というクイズになっているのは如何なものか。 ほぉ、日本の人口密度は2003年時点で約342人になるのか。 多いのか少ないのかどうか分らないが、この問題でいくつか疑問がある。 まず、カンマの位置が訳がわからない。 通常、数値のカンマは「37,285,690」のように3桁ずつ区切るのが通例であろう。 この問題の区切りを見ると、4桁ずつで区切っているように見せかけて、全く一貫性がない。 さっぱり分らないし、そのカンマの説明すらない。 特に、日本地図に添えられている面積「3726,5690km2」と、表中の「3,7285690km2」 などはカンマの位置だけでなく数値すら違っている。転記ミスとは言え、教育用と考えれば酷すぎだ。 さらには「この式を電卓で計算すると」、その答えは「3.42…」となり、堂々と「約342人/km2になるよ」と書いてあること に、むしろ困惑させられる。 ただ、記載されている「約342人/km2」は、一応、根拠のある数字のようだ。 平成15年の面積値の特徴
(1) 平成15年10月1日現在の国土の面積は,377,899.20km2、1年間で 11.95km2増加 国土の面積は、埋立等により引き続き増加してい ます。1年間の増加面積は、東京ドーム(0.047km2)の約254倍に当たります。(資料−1) (2) 面積が最も増加した都道府県は、愛知県で、4.31km2の増加 (資料−2) (3) 面積が最も増加した市区町村(政令指定都市の区は除く) は、愛知県常滑市で、主に現在建設中の中部国際空港の建設により 4.27km2の増加 (4) 昭和25年からの埋立による面積の増加は、1,084.61km2 昭和25年から平成15年の54年間に、屋久島 (504.88km2)が約2島誕生したことに相当します。 (資料−4) (5) 平成15年10月1日現在の日本の人口密度は,342.5人/km2 10年前に比べ、1km2当たり7.3人の増加となっています。 (資料−5) 資料−1 昭和25年〜平成15年の国土面積公表値の推移 資料−2 面積が増加した上位10都道府県 資料−3 境界の未定箇所について 資料−4 昭和25年〜平成15年の埋立面積の推移 資料−5 昭和63年以降の人口密度 国土地理院のサイトより、(http://www.gsi.go.jp/WNEW/PRESS-RELEASE/2004/0209a.htm) とはいえ、日教組の主張する日本の面積37,285,690km2説に対し、国土地理院は377,899km2と 2桁小さい数値を掲載している。 資料の内容と、そのブランドを天秤にかければ、国土地理院の方に分がある訳だが、いくらなんでも電卓を持ち出しておいて、その結果が違っているというお粗 末さ。 最初から「答えありき」で作られた帳尻合わせの読み物で、書いた本人が電卓を使っていないのが丸分りだ。 こうなると、本当に大丈夫かと疑いを持ち始めるが、次の問題で唐突に沖縄県の嘉手納町が登場する。 こんどは、カンマの区切りが一切ないので分り難いが、計算そのものは合っている。 ただし、その次に唐突にこのようなカコミ記事が現れるのは、もはや「おもし ろ算数教室」の範囲を超えている。 というか、算数なんかどうでもよくて、こちらが主題なのだろう。 唐突に登場した嘉手納町、「比べてみれば、確かに多いですが」という数字ではあるが、東京、大阪など人が多いところと比べればその水準は低いだろう。 嘉手納町が日本としての平均より高い水準だが、だからどうした、という数字でしかない筈なのに、異常に問題があるように深刻ぶって問い掛けてくる。 続く「CHAPTER2」に期待を寄せながら進む事にする。 はて?いつから「おもしろ算数教室」が、クイズになったのか? それも、かなりわざとらしい。というか、わざとだろう。 そして、その答えが「カデナ米軍基地」と単純明快にその固有名詞だけにしてある理由は簡単だ。 次に、要らない「ミニ知識」が登場させるためのものなのだ。 しばし、インテリぶった人間で、いかに自分はものを知っていますよ、という輩が使いそうな手法である。 その手法、だいたいの手順は次のとおりだろう。
Q4の答えを書いた時点では「4」の手順を待っている段階だ。 さすがに、この手の連中、知識をひけらかす事が世間的に嫌な行為だと思われていることを承知している。 したがって、相手から「どういう事?」などと問うような形で一旦解答し、相手が、わかったようなわからないような顔をしていると、平静を装いながらも 「さぁ、質問しろ、さぁ、さぁ」などと待っていたりするのである。 もちろん、この手法は、聴衆に興味を持たせるための一般的な手法ではあるが、こういう連中に対して、ついつい「どうして?」などと尋ねてしまうと、大抵の 場合後悔することになる。 嬉々として解説をはじめ、聞いてもいない事まで主張しはじめてウンザリしてしまうだろう。 そういうパターンを教科書通りに踏襲して、必要もない「ミニ知識」として まとめ上げる技、日教組はさすが教科書通りだ。 計算は間違えるけどな。 次いで、算数の設問であれば「嘉手納基地の面積は○○である」と与えられる数値なのに、あえてここでその面積を考えさせる辺りに、誘導のいやらしさを感じ る。 「おもしろ算数教室」である事を、少しは思い出すべきだ。 設問を出しておいて、何が「なんと」だ、わざとらしい。 そんなツッコミが入らないよう、ひとまず算数教室に戻ってみる事にしたのだろうか。 ああ、これって「たすきがけ」と言うヤツじゃないのか、と算数だかの知識を多少は呼び覚まされるが、わざわざ「マジッククロス」と横文字にしている辺りが 小癪だ。 ただ「村の鍛冶屋」の「鍛冶屋」じゃないが、へたすると「たすき」なる言葉も死語になりつつあるのかもしれない。 そんな事を思いながら次の問題に進んでみると、こちらも一応算数だ。 再び、計算は間違っていないが、この数字はだいたい「東京都」の人口密度に近い数字だろうか。 東京都というと人が多いイメージがあるが、それは23区内など一部限られた地域に限定される訳で、郊外の田舎地帯で平均化されてこの程度になっている。 逆を言えば、それらの数字を除けば、23区内はとんでもない数字になっている事が想像できる。 しかし2つの数字を比べて、トンチンカンな解説に見せかけた伏線を張って、解説なのに質問という不可解なものを登場させている。 どこの地域でも、人が住めない土地の面積を除けば、相応の数字になる事が予想されるが、そういう事情はお構いなしに「もっともっと人口が混み合っている 町」で「すごい人口密度だと思わない?」と軽く尋ねられたりする。 でも、その「?」の後に待っているのは「なんで?」という声だろう。 「ミニ知識2」とやらで解説したくて仕方がないのがミエミエだ。 そもそも、嘉手納町の人口密度は「増えて」いない。 計算上、単なる面積と、人が住める面積を加味した結果が大きく違うだけで、人口密度が増えたのはQ3からQ7の間に限った話だろう。 「どう思う?」と言われても、質問者が用意した回答以外は拒否されるような決まりきった質問形式が腹立たしいが、ここで「まとめ」になる。 これが、常人のサイトなら何も言わないが、日教組という教育のプロである人間の集まりが提供する「算数教室」であるから、計算違いなど論外、カンマの位置 まで指摘したくもなる。 どういう意図で嘉手納基地を出してきているかは、この団体の活動を考えれば自ずとわかるのだが、余計な事に拘るあまり、肝心な事を見落としてしまってい る。 マークシートなら間違いなく「不正解」となるであろう大きな間違いだ。 一方で、日教組が提供している算数教室がこのような明らかな計算ミスを掲載しておいて、そのままになっているという事は、誰も気付かないか、誰も見ていな いか、誰も指摘しないのか、要は、算数教室として役に立てている人がほどんど居ない、という事なのだろう。 こうなると、算数教室と謳いながら、提供している日教組が算数などどうでも良いと考えているのではないか? 確かに、本稿の表題通りなのかも知れない。 |