Go!Go!お出かけ〜気が向いたら更新

山の中で遺産相続 〜場所はヒミツです〜


2005/11/06
 今回の「お出かけ」は一風変わっている。
何故なら、場所を明かせないからだ。
既に到着した、この場所。
    山?
    今は、もう秋〜。雨降ってます。
山・・・の入り口?

雨がパラついていると言うのに、用もなく山の入り口と呼ぶにはふさわしくない場所に立っている。
実は「松茸狩り」なのだ。

松茸と言えば、毎年同じ場所に生えてくるもので、それぞれ生えてくる場所を、それぞれが知っているのだが、親兄弟にも自分の場所は教えないと言う。

さて、そんな貴重な場所だが、今年83になるウチの婆さんも、そろそろ足腰が弱ってきたため安易に山に入ることも出来ない。
と言う事で、孫の自分が受け継ぐ、という事になったのだ。

いや、まぁ、そんな大袈裟なものではない。
商売でやっている訳でもなく、単なる秋の味覚を楽しむ程度のモノなので、場所も限られている。
しかし、国産天然松茸、という響きは小雨降るあいにくの天気でも人の心を躍らせるのに十分だ。

「ここから入るだよ」

言われたその場所は、山の入り口でもなんでもない。
タダの斜面だ。
躊躇しつつ、カメラを構えてもたもたしている間に、どんどん先に進まれてしまった。
    山の入り口
    とりあえず、風景にはモザイクを入れてみました。
当たり前と言えば当たり前だが、道はない。
それも、濡れた葉っぱがが顔面を殴打し、衣服が枝に引っかかる。
モタモタしているうちに、距離だけでなく高低差までついてしまった。
    山の入り口
    雨の雑木林。絵になるけれど、散歩には向かない。
驚いたのは、婆さんの健脚ぶりだ。
めっきり足腰が弱くなって、と言う割に、トンでもない機動力を見せ付けられる事、しばしば。
ちょっと、先まで行こう、と言ったか言わないかの内に、視界から消えそうになる。
    UMA
    青い服着た高機動力の婆さん。ザクとは違うのだよ。
さて、婆さんの機動力と、勝手の違う山道に翻弄されている自分に、都会人の脆弱性を見せ付けられた気分だが、肝心の松茸を発見するスキルも兼ね備えていない。
とりあえず、探してみるが、そんなものは何処にも見当たらない。
ただ、よく観察してみると、既に他の人が入って、ホジった痕跡があちこちに見受けられる。
やはり、競争率は高いようだ。
ただ、先に入ったから採れるというものでもないらしく、時期と運が大事で、先週までなかったものが、今週は生えている、といった事もあるらしい。
どちらにしろ、この山の中で、高速移動の婆さんについていくのがやっとだ。
    松
    何か、木がたくさん生えている、という感想しか浮かばないんですが…。
しかし、山の中に立ってみると、どことなく松茸の匂いがする。
この婆さんのおかげで、毎年、松茸を喰っているわけだが、そんな匂いが薄まった空気が何処からか届くような、そんな雰囲気だ。
もちろん、単にカビ臭いだけかもしれないが。

ところで、松茸、どうやって生えているのか。
そんな事すら知らないのだが、この時期、テレビで芸能人が喜んで松茸を採っている姿を見ることがあるので、あんなものだろう、と思っていた。
だが、婆さんは違った。

まず、地面に這いつくばり、地面を撫ぜるように叩くのだ。
どうやら地面を触って、感触を確かめているというか。
真似してやってみた。
思ったより、積もった葉っぱなどで軟らかい地面に驚いたのだが、何がどうなのか、よく分からない。

「ここ、あるで、触ってみ」

へ?!
    あるのか?
    ここといわれても…。どう見ても単なる地面。
ここ、と言われても何の変哲もない地面だ。
盛り上がっているとか、色が変わっているとか、そういう他と違う要素が見つからない。
だが、触ってみると、微妙に硬い感じが手に伝わる。
なんと言うのだろう、「しこり」という表現が、よく、乳がんの検診などで使われるが、おそらく、そんなレベルではない程の微妙さ。
もちろん、乳がん検診などやった事もやられた事もないので想像上の話だ。
どちらにしても「ここを触れ」と言われなければ、見逃してしまうのは間違いない。

「掘ってみ」

言われるがまま、掘ってみた。


    あるのか?
    な、何か出た〜!サ、サ、サトイモじゃないのか!?
うわっ!
何か出たよ!出たよ、ママン!

思ったより根っこが絡まっていて、柔らかだけど掘るのは難しい地面。
そこを掘ったら、何かが出てくるではないか。

折れないように、慎重に周囲を掘り下げる。
    掘れ掘れ
    ここ掘れワンワン。今の私は犬です、犬!
思った以上に深くまで続く茎(?)。
なかなか、最後まで到達しない。
ついでに言えば、雨の中で、一眼レフを持ちながら、掘っているなんて、今まで一番苦労した取材だ。
でも、何か、妙に興奮している自分。
「狩り」には、生物の本能を刺激する何かがあるのだろう。

そして、いよいよ辿り着いた先端。
何とか引っ張り出すことに成功した。

じゃじゃーん!

    松茸様
    傘は開いていないけど、香りはムチャクチャ松茸!
思わず、カメラを持つ手が震えてしまい、ピンぼけになっているのはご愛嬌。
想像以上に立派な松茸とご対面だ。


感動も覚めやらぬうちに、次へ移動。
やっぱり、婆さんは健脚だ。
    松茸様
    気が付けば、視界の彼方
気が付けば視界の彼方に消える婆さん。
「老茸」を発見したらしい。
このキノコ「ろうじ」と言うのだが、やや苦味のある美味しいキノコで、地元では、こっちの方が好きだという人が多い。
確かに、香り松茸、というくらいだから匂いだけの松茸より、味と滋養のある老茸が珍重されるのも頷ける。

ようやく追いついて見てみると、なるほど、これは自分にも分かった。
    老茸
    老茸:焼いてショウガ醤油で食べると美味い。
ただ、キノコを発見する事が出来ても、それが実際食べられるキノコかどうか、判断するスキルはない。
普段、パソコンとか操って偉そうな事を言っているが、今の状況では無知で役立たずだ。
こんな山奥では、検索エンジンも使えない。

    老茸と松茸
    老茸と松茸。レンズが曇っちゃってもう、何だか。

「こっちにも老茸があるよ」

言われて行ってみる。
    老茸?
    老茸?どう見ても、石か木の根元にしか見えないんですが。
ある、と言われても、石が落ちているか、木の根元なのか判断がつかないモノがあるだけだ。
しかし、掘ってみると、ちゃんとキノコが出てくるではないか。
    老茸!
    老茸!こっちの老茸はでっかいぞ〜♪
驚くべきキノコ狩りの奥深さ。
完全に脱帽である。

雨が降っている事で、足場が悪く、これ以上は止めておこう、という事になったのだが、落ち着いてみると、山に入ってどれくらい時間が経過したのか、サッパリわからない。
方向は、さほど迷うような奥地ではないので、分からなくもないが、どの方向を見ても、同じような景色に見える。
なるほど、知らない人が、何気なく山に入り込んで遭難しちゃうニュースを良く見かけるが、妙に納得できる状況だ。
あと、芸能人の松茸狩り番組はインチキじゃないかなぁ、と感じたのが収穫か。



採ってきたキノコ、広げてみるとこんなサイズ。
こういう時、タバコの箱を並べるのが普通だろうが、Palmユーザーらしく、Zire21を並べてみた。
    獲物
    老茸!こっちの老茸はでっかいぞ〜♪
上が老茸で右が松茸である。
小さな老茸は、ちょうど昼時で何かを焼いていた伯父の金網の上に乗ってしまって、写真に取る前に火あぶりになった。
それも、松茸に目をくれずに、老茸の方。
それほど美味いのか!

しかし、冷蔵庫から無造作に取り出された包みが2つ。
開けてみると・・・
    獲物2
    極太タイプあります。うまい棒よりも太い。
豪華、国産松茸が大量にあるではないか。
もちろん、伯父には伯父だけが知っている場所があるからだろう。
撮影用に並べながらガッカリ感じるが、何か別のモノの大きさ比べで負けたような無念さだ。
もう1つの包みからは、やや小ぶりなのがゴロゴロと。
    獲物3
    小さい、といっても、数があるから、それだけで豪華。

一様に傘が開いていないのは、地中の様子を確かめるように探した結果だろう。
地面を這うようにして探していた婆さんの姿を思い出した。

こうして、松茸の場所はわかったのだが、まだまだ、自分には松茸を探し出すスキルがない。
真似して山に入っても、徒労に終わるか、毒キノコで逝ってしまうのがオチだろう。
来年もその次も、1人で松茸狩りが出来るようになるまで、三途の川を渡るんじゃないぞ、と言ったら笑っていた。
まぁ、足腰が弱ったと言って、あの健脚ぶり。心配するのは、むしろ自分の運動不足じゃないかと痛切に思った。
本日の好日度:★★★★☆ 「カメラは防水か?」