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小さい春、大きな休日


2008/03/29
「地球温暖化」らしい。
冬が来るたび毎に、今年は寒さが厳しいだの、暖冬だの、それぞれが勝手な地球温暖化を主張しているが、寒い事には違いがない。
だが、ほんの1ヶ月前まで寒い寒いと言っていたのが、嘘のように暖かい。
温暖化かどうか別にしても、春になると嬉しくなるのは事実のようだ。
そんな訳で、豊田市郊外の豊田市内某所(※)にのんびりと花見に出かけてみた。
(※)市町村合併で近隣の町村を合併して大きくなった豊田市だが、旧来の場所は未だに市内である感覚がないので、こう表現するのが妥当かと。

「ゆきやなぎ」は、遠目に見ると、白くて柔らかな綿のように見えるが、花の命はなんとやら。本当に「ほんわり」している期間はあまり長くないように見える。
今年は、出不精より春の陽気が優ったのか、少々、きれいな時期に足を運ぶ事ができたようだ。
大人の背丈を越える高さの白い壁で挟まれた小道を歩いていると、異世界への通路かと錯覚してしまうが、開けた場所に出ると、確かにこの世のものとは思えないような輝きで、白い花が整然と咲き乱れている。
負けるものか、と言わんばかり。
何かを争うように、黄色い奴も列を作って対抗する。
残念ながら、桜の方はまだだった…。
「ゆきやなぎ」、その1つ1つは白くて可憐な小さな花。
むしろ、何の変哲もない、単なる花にしか見えない。
単なる花、「点」たる存在も、群れ咲く事で、枝そのものを白く染め上げ、それは「線」になる。
そして、白い線は、縦横無尽に走り回り、周囲を真っ白に染めるほどの「立体物」としてその存在感を構築する。
こんな白い塊だが、浮かれて飛び込んでも、受け止めてくれる訳ではない。
大量の枝でとんでもなく痛い思いをするのが関の山。
春だからと、浮かれるにしても加減は知るべきだろう。

こちらは、黄色い奴の先端に生えている若葉。
この柔らかな緑色は、摘んでそのまま食べられるんじゃないかと思うくらい、艶かしい。
こういうのを「萌え」というのか。
どこかしら、この若葉にエロティシズムを感じるのは、単なるヘンタイか?

き、気を取り直して、シャボン玉でも飛ばしてみよう。
コンビニなどに売られている、この手のオモチャ。
子供におねだりされて、買わされる人も少なくないだろうが、いい歳した大人が買って悪いという決まりはない。
出てくる、出てくる。 面白いくらい、シャボン玉が出てくるではないか。
いや、子供のオモチャにしておくのは勿体無いくらいだ。
だからと言って「大人のオモチャ」と言ってしまうと、何か別の問題を生み出しそうなので、やはり子供のオモチャと言っておこう。
それにしても、この生成効率はスゴイ!
何が「スゴイ!」かと言えば、息を吐く速度に、シャボン玉を生成する速度が追従する事だ。
子供の頃、貧乏なハナタレ小僧にとって、シャボン玉と言えば、石鹸水にストローと相場が決まっていた。
一応、頭を使って、ストローの先を切って開いたりしていたが、それらは連射には向かなかった。
だが、このコンビニで売られている「良い子セット」のような安っぽいオモチャは、それなりの研究の成果が詰まっているのであろう。
吐いた息がすべてシャボン玉になるかのような勢いで、射出口からシャボン玉が吐き出される。
楽しい!
思わず、呼吸をするのを忘れる勢いで、息を吐き続ける。

    「財源が不足してるな」「では、増税だな。搾り取れ」
風がそれなりに強い日だったので、風向きによってはシャボン玉御一行様は、一斉に上に飛ばされる場合もある。

    「で、増税の成果は?」「支持率が下がる一方です」
また、その逆に下に落ち続ける場合もある。
そんな中、大きいのは膨らます難易度の他、自分の顔面めがけて飛んでくる、というリスクを背負っている。

    「議会の方はどうなっとるんだね?」「色々な意見が入り混じってグナグナです。」
・・・・・・あぁ〜、頭がクラクラする。
息を吐きすぎたようだ。
敷物に寝転がって一休み。
今日は、空が青いな。
不思議なもので、寝転がって写した空の写真は、キチンと逆さまに見える。
また、ゆきやなぎのある風景を寝転がって逆さまに写すと、妙な景色に仕上がる。
決して、撮影した画像を回転させたわけじゃありんせん。

春は、足元の小さい奴にもやってきている。
忙しそうな足取りで、何をするでもなく、草むらを登って降りて。
テントウムシは「お天道様」に向かうので、その名があると言われているが、一番高いところに登った後も、その名を否定するかのように下向きに降りている。
テントウムシも春ボケか?

    「あ、あなたねぇ!私を覗き見てるのね!プライバシーの侵害よ、し・ん・が・い!」
小さいと言えば、このような可憐な花も咲いていた。
小さくて、青くて、その上、細かい点の造形まで妥協がない。
世界中の色々な人が、自分勝手に作り上げて信じている神様が、どの程度の存在かは知らないが、こんな小さな花を作る自然の神様は、手先がとても器用なのだろう。
また、当たり前のように咲いている小さな花。
5枚の花びらが、それ相応の大きさでバランスを保ちながら咲いているのは、一体、どういう所業なのか?
人間の女性など、何度も何度も鏡を見なければ化ける事すら不完全と言うのに、勝手に咲き垂れている名もない小さな花の、この整った姿は如何なイタズラか。
なるほど、人は、本当の神様を見ないようにするために、自分たちの都合の良い神様を作ると言う訳か。

こうして、シャボン玉を飛ばしたり、酸欠で倒れたりしている怠惰な人間とは対照的に、小さい奴は土日も関係なく労働に勤しんでいる。

    「人間って、ニートとか言う働かずに食わせてもらってる連中がいるんだろう?虫けら以下だな。」
アリが何かを引きずって、せっせと歩いている。
教科書どおりの働き者だ。
地面に寝転がり、匍匐全身の体制でアリを追う。
そして、写真を見て驚いたのだが、どうも、アリと目があっているんじゃないか?
あまりにも執拗に追いかける人間の姿に、エサを取られるんじゃないかと心配したのか、余裕のカメラ目線を送ったのか、その真意はわからないが、頑張っているのは確かだ。
アリ、偉いな。

この一帯も、あちらこちらで、冬から春へと駆け足で変わりつつある姿を見せてくれるが、どこにでも「のんびり屋」は居るものだ。
すっかり葉もタネも落ちた木の上に、残っていた実が1つ。
よもや、ヒキコモリじゃなかろうが、余計なお世話と知りつつ、枝から離して地面に落として差し上げる。

人で溢れる花見も風情として楽しめるものだが、こういう人気のない場所で、勝手に春を満喫するのも面白い。
勝手ついでに、普段あまりやらない事をするのも面白いだろう。
単に昼寝をするのも最高だ。
まぁ、家の中でゴロゴロしているか、外でゴロゴロするか、という場所の違いだけになってしまうが、それでも春はキモチイイ。

    「ええ、見ましたとも」「シャボン玉してましたよ」「カステラも食ってましたわ」
本日の好日度:★★★★☆ 「ゆきやなぎ、実は少し臭い」