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観察者 in 聖火リレー 〜長野県長野市内〜 「02:朝の駅前」


2008/04/26
mizuno-ami
始発電車、で行っても仕方がない。
聖火リレーが走り出すのは、朝8時30分からだ。
始発に乗って6時に着いたところで、どう考えても時間を持て余すのが目に見えているが、興奮しているのと、何だか腹も減ってきたので、始発から3本目の電車に乗る事にした。
長野駅に7時頃到着する筈だが、それでも気が早すぎだろう。
そんなことを思いながら、到着した長野駅のコンコース。
列を組んだ警官隊が、駅出口の善光寺口の方へ歩いてゆくのが見える。
不安そうに見守るのは、地元の通勤・通学客だろうか。
これから起こる事に対する不安はあろうが、その不安の種は「これから」ではなく「既に」始まっていた。
もはや、通行人が普通に歩く事は出来ないであろう密度で、中国側、チベット擁護側の双方が集まっているのが見える。
そして、聞こえるのは「フリーチベット!」の連呼と、中国語の連呼。
(※中国側が連呼していた言葉が最後まで分らなかったのだが「ほんごん、じゃいあん」と聞こえたヤツが、いまだに耳に残っている。)
朝7時にして、もはや昨日のパーキングエリアの「前哨戦」が単なる挨拶であったかのような騒動が長野駅前を埋め尽くしている。
こういう場合は、まず落ち着いて、腹ごしらえをしておくことが肝心だ。
なにせ、この雰囲気からすれば、今以上の事が起きる事は必至であり、そうなったら、メシどころじゃないだろう。
そもそも、人間、腹が減っては戦が出来ぬ。別に、戦をしに来た訳じゃないが、空腹には変わりない。
路上で朝食を採りながら、この様子を眺めてると、キチンと2つのグループにエリアが分かれているのが分る。
この分類作業も警察の役割のようだ。
張られたロープの「中国側」に、チベット旗などを持つ人が進みそうになると、すかさず交通整理をする。
言われた方も、特に何かいう事もなく、普通にそれに従う。
ちなみに、この警察官、「埼玉」と入った制服を着ていたのは、他県からの応援組みだろうか。キビキビと動いていて、中々の高感度の高い若い警官だった。
「チベット開放」を叫ぶ人々
圧倒的に人数が多い中国側の人々。
さらに大きな旗を持って集まっている。
報道関係者も、当然ながら多く詰め掛けている。
だが、それらは聖火が通過する予定の沿道でのみ行われている活動、いや、騒動と呼ぶに相応しいが、市民は遠巻きに眺めつつ、日常生活を優先しているようだ。
通学途中の女子高生などは、「写メ」を友人などに送る、極めて日常的な対応で眺めている。
本来なら「オリンピックの聖火リレーがある」と言うだけで、動員されて旗を振るか、冷めているようで地元でこういう事が行われてちょっぴり誇らしく思うような年頃だろうが、そのどちらでもない。
地元の人の心情を表すような光景だ。
オッちゃんなど、騒ぎをツマミに、朝っぱらから缶ビール。
もしかしたらホームレスなのか、と思しき風体のオッちゃん、ニコニコしながら、チベット旗を貰って、楽しそうに振っていた。
どこかしら、日本の縮図を見たような気がする。
また、見事に落ちていた胃腸薬。
関係者のものだろうか。
人によっては胃が痛いかも知れぬ。
ロープだって厳重に張らないと、大変な事になるのだろう。
だが、これはやり過ぎだ。
一家揃って、命綱どころか、SMプレイのような状態になっている。
また、気が付けば、さらに赤い旗が増えている。
それもその筈。
駅から赤い旗を持った連中が、次から次へと出てくるのが見える。
もちろん、チベット旗も居るが、その数は比べるまでもない。
旗が大きすぎるので、数が多く見えるのかもしれないが、一体、どこからここまで集まってくるのか不思議なほどだ。
若い人が多いので、おそらく留学生なのだろう。
中国政府が動員したという噂もあるが、何らかの一言でここまで異国の地に人民を集める事が出来る国に恐ろしさを感じる。
日本じゃ、下らない平和団体が日の丸振るだけで軍靴の音が聞こえるというが、異国でここまで自国をアピールできる群集が紛れ込んでいるのを見れば、機関銃の音が聞こえても不思議じゃないだろう。ここに来て、不安を訴えない事を見るだけでも、いかに性根が腐っているか分る。

警備体制も半端じゃない。
デパート屋上にずらりと並んでいるのは警察官だろうか。
どうやって入り込んだのか、こんな場所にも1人居た。
また、少々離れたビルの屋上にも人影がある。
後からカメラワークを見たら、どうもNHKのようだったが、高所恐怖症の人なら、この写真を見ただけで足がすくむんじゃないか。
また、身近なところでは、歩道橋まで封鎖されている。
駅を利用する市民にとって、便利であろう歩道橋まで封鎖されているが、テロでもデモでもなく、「平和の祭典」の聖火リレーが行われるだけでこの異常な状態になっている事は事実なのだ。
「事実なのだ」などと偉そうに言いながらも、テレビや新聞などで見聞きした事から感じた印象とは、かなり異なる事を痛感した。

では、カメラを持ってあれらの群れに入っていくことにしよう。