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桜とツバキと錆びた鉄 〜豊田市・三河広瀬駅跡〜


2011/04/10
mizuno-ami
日曜の朝、グータラ会社勤めにとっては至福の時間。
昼間でゴロゴロ過ごすのが常だった筈なのに、気付けば、戦隊モノに仮面ライダー、プリキュアの子供番組フルコースを見るために早起きをしている。
そして、せっかく晴れたのだから、と、行くアテも無く外出をする。
せっかくなので、花見でもしようと車に載り、ハンドルを握りながら、何気なく通り過ぎたものの、妙に気になって引き返した場所がココだ。
    三河広瀬駅
桜が見事に咲いている、田舎の駅。
    三河広瀬駅
何の変哲も無い駅舎のようだが、実は、ここ、廃線となった名古屋鉄道三河線の駅の1『三河広瀬駅』なのだ。
駅舎は文化財とやらで、そのまま残っているため、廃線マニアでなくとも、良いな、と感じる田舎駅の風景がそこにある。
    三河広瀬駅
もちろん、線路に下りても電車は来ないが、思ったより、線路の上は歩きにくい。
枕木の間隔が、自分の歩幅の一歩よりも若干狭いので、余計にそう感じるのかも知れない。
    三河広瀬駅
しかし、電車が走っている前提なら、こんな光景は見たくないようなアングルだが、今ならバッチリである。
    三河広瀬駅
目の高さからすれば、こいつの見ている風景だろうか。
    バッタ
人間の目の高さなら、駅の看板と、桜の木、そして、悠々と流れる矢作川の姿が見えた頃だろう。
    三河広瀬駅
そんなに人が住んでいる場所ではないにしろ、地元の高校生などは利用したに違いない。
そして、日々、こんな景色を眺めながら、電車を待っていたんだろう。
    三河広瀬駅
こうして人も居ない、電車も来ない、そんな駅のホームに立っているだけで、色々な光景が頭に浮かんでくる。
なるほど、廃駅マニアの気持ちが分かるような気がする。

廃線と言えど、今も線路がそのまま残っている。
    三河広瀬駅
豊田市方面に続く線路。
足元にあるものが、そのまま遠くまで続いている、という風景は、妙な冒険心を煽る。
ふと、歩いていってみてたらどうなるんだろう、なんて事を思う少年の頃の気持ちが分かるようだ
廃線とは、懐古や郷愁につながるものらしい。

また、遠くに続く線路が乗客目線なら、次第に近づいてくる駅舎の姿は運転手目線か。
    三河広瀬駅
線路が近いので、どちらかといえば、電車の目線だろうか。
そして、もし、電車に人と同じような感情があったなら、毎日、こうして見える駅舎で待つ学生の姿や、その成長の姿を、密かに楽しみにしていたんじゃなかろうか。

そんな駅のホームから、大きな桜が1本あるのが見える。いや、嫌でも目に入る。
    三河広瀬駅
何せ、矢作川の川原に下りても見上げるような高さの1本。
人間を並べてみれば、このサイズになる。
    三河広瀬駅
ちょっと分かりにくいか。
駅舎から見えた、この秘密基地のような小振りな建物、
    三河広瀬駅
川原に下りて見上げると、それなりに高い物だと分かるが、桜はそれよりも大きい。
    三河広瀬駅
ちなみに、この秘密基地、水位流量観測所と雨量観測所らしい。
    水位流量観測所&雨量観測所
さり気なく40年以上存在しているのだな、これも。

田舎の駅と、その周辺に広がる、のどかな景色。
こんなところに住んだことは無いのに、何故か懐かしく感じるのは、これが日本の原風景の1つだからだろうか。
    三河広瀬駅
近くに、やな場があり、シーズンになると、それなりに人が押し寄せる観光スポットではあるが、こうして、ロクに人が居ない時期にのんびり来るのも悪くない、いや、こっちの方が好きかも知れないな。
暑いくらいの日差しの下、廃駅のホームのベンチの日陰に座り、大きな桜を眺めながら、持ってきた饅頭を食べてみる。
騒ぐ人も、ビニールシートもない、地味な花見だが、様々な郷愁、思い、想像、無言で湧いてくるもののおかげで、とてつもなく気分が良い。
また、川面に目をやると、1つのツバキの花がポツンと流れに引っかかっているのが見える。
    三河広瀬駅
水に浮かぶ赤い花。
なぜか、かえるまつりでお馴染みだった、暗黒舞踏の本木さんの姿を思い出す。
さびた線路、朽ちたホーム。
そんな廃駅、廃線には、様々な思い出をよみがえらせる、何かがあるようだ。
本日の好日度:★★★★★ 「うららかな春」