1年ほど前、体調不良から胃カメラを飲んだ。 正確には、鼻から通すものなので『飲んだ』という表現は妥当ではない。 何にしても、世間で、楽だと言われているほど楽じゃないよ、という感想だった。 そして、残念なことに、体調不良を理由に「とりあえず」飲んでみることにした。 2回目には2回目の怖さがあるが、果たしてどうなったのか? 当たり前だが「8時間前から絶食」、「色のついていない液体なら1時間前まで可」、この辺りの注意事項は変わらない。 もちろん、当日の朝食は食べられない。 予約の時間は11時だ。何も食べられない時の、やる事のなさというのは、改めて驚かされる。 「ちょっと菓子でも食べて時間を潰そう」という事ができない。かといって、やることもないのに病院に言っても仕方がない。 こういう時の、上手な時間の潰し方を知っている人があれば、教えて欲しいものだ。 15分前に病院に着く。10分前には来てください、とあったので、その5分前集合なら優秀だろう。 この時点で、特に緊張感はなく、空腹感の方が強い。 そして、前回の経験から痛感した「とにかく、体の力を抜こう」を言い聞かせつつ、待合室で待つ。 予定時刻通りに呼ばれたが、そのまま処置室に通されたので驚いた。 確か、前回、別室で前処置を受けた後、移動した記憶があるのだが、話を聞いてみると、水曜日に内視鏡の検査を集中していれているとの事で、その順番なのだろう。 そういえば、待合室で、同じような受付を済ませた人がいた事を思い出した。 水曜日は、胃カメラ・ディー。 まず最初に手渡されたのが、胃の中の泡を消すクスリ。 これは覚えている。小さな紙コップに入っている『本当にまずい』液体だ。 臭みもなく、色もスポーツドリンクなのに、ただ不味さだけがある不思議な液体。 これを、ちびちびと飲みながら話を聞く。 引き続き、鼻スプレー、ゼリー状の麻酔、チューブと続くが、チューブの挿入時に不快な感じがするだけで、まぁ、こんなモノかという余裕を感じる自分に驚いた。 前回は、鼻チューブだけで、相当なショックを受けて心折れてたのに。 おかげで、じわじわと鼻の奥、喉にかけて麻酔が効いていく感じが良く分かる。 風邪などで、喉が腫れたりするが、あれの「痛みがない」バージョン。 つばが飲み込めない異物感があるけど、痛みがないし、息苦しいようで普通に呼吸が出来る。 もちろん、これはこれで、気分が宜しくない。 ある程度の時間が経つと、早速、カメラ挿入となる。 横を向いて、小ぶりの抱きまくらを抱えさせられる。 身体の力を抜く、身体の力を抜く、身体の力を抜く 頭のなかはそれだけだが、鼻から異物が入る感覚は、やっぱりキモチ悪い。 ただ、先生の「喉のあたりを通りました」という言葉に驚いた。カメラが入っている実感がないのだ。 そして、これなら大丈夫だと思っていたところで、おそらく、胃に到達したんだろう。 オエッ 何も出ないけど、喉の一番奥にモノが入ってしまったような嘔吐感が1発だけ発せられ、目から涙がこぼれ、体に力が入る。 ふええ、やっぱり、エロ漫画の「ひぎぃ」って声を出すような感じだ。 その後、努めて、体の力を抜いてみたが、出来ているようで出来ていない。 「あ、力が入ってる」「あ、力が入ってた」の繰り返しで、そういう時は苦しい。 一方で、その状況を冷静に観察できる自分が居ることに気づく。 その観察によれば、まず、痛みはないようだ。 全くない、というと嘘になるが、胃の中を何かが動いている、という感触があるものの、「痛!」と感じるような事は全くなかった。 しかし、異物感は半端じゃない。 それは「胃の中に何かがある」というだけじゃなく、送り込んでいる空気なんかも感じられるほどの異物感だ。 例えたって実現出来るわけじゃないが、丸のまま割り箸を飲み込んだら、こんな感じだろうか。 異物感が嘔吐感にもつながるので、とにかく「抜いて欲しい」という、本能的な嫌悪感というか欲求に支配されてしまうから、嫌だと思うが、その実、痛みはないから、楽といえば楽だ。 例えば、前回は、ヒイヒイ言いながら、つばを飲み込んでしまったが、今回は、出るに任せて、垂れ流していた。 手渡されたティッシュを有効に活用しつつ、途中で数回交換する余裕があったのは驚きだ。 また、カメラが入っている感覚がありながら、「腹減った」と思う余裕もあった。何この余裕? 垂れた涙は仕方がないので、そのままにしつつ、目を開いたり閉じたり、よだれを垂らしたりしていたら、終わりとなった。 面白い事に、カメラを抜く時は、まったく感覚がない。「え?抜いたの」という感じだ。 もしかしたら、カメラなんか挿入してないんじゃないか? さすがに、麻酔による喉の奥の違和感は残っているが、今回は、普通に先生と会話が出来ていた。 前回は、ヒイヒイ言い、咳き込みながら、返事を返すのが精一杯だったのに、この「進歩」は何だろう、と自分を褒めてやりたい。 おそらく、次はもっと上手に力を抜くことが出来るだろうが、出来れば慣れたくもないものだ。 ちなみに、結果は問題なし。いわゆる神経性の胃痛であれば、もう少し、ストレス・コントロールをすべきだろうか。 そっちの方が難しそうだ。 |