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窓の外に見えるもの 〜松本・ナワテ通りシリーズ〜


2006/02/04
 過去に撮影した写真を整理していたら、どうもこの時期になると松本方面へ足を運んでいるらしい。
根本的に、冬のこの時期、不慣れな雪道を無難に運転できるほどのスキルは持ち合わせていない。
とりあえず「行けるところまで行ってみよう」と出発したら、予想に反して道路に雪もなく、そのまま松本に着いているケースが多いようだ。
ちょっと用事もあるし、実は気になっている食べ物もあるので、足を運んでみる事にした。

国道19号線は、ありがたいことにネット上のライブカメラを使って、ある程度の路面状況を知ることが出来る。
予め路面に雪がない事を確認して出発したので、気持ち的には楽だ。
だが、途中、休憩に立ち寄った道の駅「日義木曽駒高原(ひよし・きそこまこうげん)」で、大きな誤算をしていた事を思い知らされた。
めちゃくちゃ寒いのだ。
ライブカメラでは伝わらない、その場所での寒さ。ちょっとした休憩なら上着なしで建物まで走るところだが、今日はカンベンして下さいと謝りたくなる寒さなのだ。
でも、幸運はそこにあった。
    トン汁無料!
    トン汁を発明した人にノーベル賞を与えたい
木曽路と伊那地域を結ぶ「権兵衛街道」にトンネルが開通した記念の行事が行われているらしく、ここ日義の道の駅では、トン汁が振舞われていたのだ。
大盛りの具入りトン汁を頂くと、それだけでお昼御飯が済んでしまうような満足感。
無料だと思うと、何だか嬉しくなるのはビンボー人の性か。
さすがに、外で食べていたら手が冷たくなって箸が持てなくなったのはご愛嬌だが、身体の中から温まる事ができて満足だ。

幸先良いスタート。
そして到着した松本の街。
車から降りると、そこは……さらに寒い。
寒すぎる。松本の寒さを、車のドアを閉めるまでの短い時間で身体に教え込まれてしまった。
    トン汁無料!
    スカッと晴れているけど暖かくない空
いつもより余分に着込み、早速、ナワテ通りに足を運んでみた。
入り口を守るガマ侍は、材質の影響か既に黄変しつつあり、上の白い奴は特に顕著に黄色が目立つ。これを作った学生さん「街頭オブジェと耐久性・耐候性」といったテーマでちょっとしたレポートが書ける筈なので、一度足を運ばれてはどうか。

ナワテ通りは、いうまでもなく「松本かえるまつり」でお世話になっている通り。
でも、それだけでは言い表せない魅力を持っている不思議なストリート。魅力と言うより「ツボ」だろうか。おそらくリピーターが多いに違いない。
例えば、このような店頭POP、ちょっと派手に電飾仕様になっているが珍しい物ではないだろう。
    今、売れてます
しかし、その矢印の先にあるモノは、こういうモノだ。
    え〜っと?

    焼印!
おそらく、焼印。
熱して「ジュ〜」と印をつけるモノという知識はあるのだが、実際に使用しているところを見たことがない。
自分の中の非日常品だが、ナワテ通りでは「売れている」商品なのだ。ミラクル!
本当に売れているかどうかは定かでないが、この摩訶不思議な魅力は、例えるならば「スルメイカ」。噛めば噛むほど味が出てくるというタウリンたっぷりの魅力なのだろう。

また、おせんべい屋さんもある。
美味しそうなせんべいが並んでいる上に、種類も豊富だ。
店頭に並べてある「ハート型」せんべいも、非常に工夫に富んでいる。
    ハート型
    やっぱり、返事もせんべいで返すのが礼儀なのかな
バレンタインを前に、という訳ではないが、ハート型せんべいに書かれたメッセージ。
人とは違った、ちょっとした贈り物に最適ではないだろうか?
定番の恋愛モノから、お礼、激励など色々なシーンに使える言葉が用意されていて、見ているだけで飽きない。
ちなみに、一番グッと来たセリフはコレ↓
    信じろ!
    単純明快、どんな場合に使えばいいのか微妙ですが
「信じろ」と、せんべいに命令される場面は人生、それほどないだろう。
風変わりなプロポーズに使えるのかもしれない。
ただし、断られる場合は、その場でハートを割られて終わり、という事になり兼ねない。せんべいは割れやすい。行動は自己責任で。

気になるお店といえば、ここもそうだ。
    ぞろぞろと
怪獣消しゴムから各種置物から玩具から雑多に並んでいる店頭。
もう一方には、このような骨董品(?)も並んでいる。
    ぞろぞろと2
あまりに怖いので、中に入ることなく過ぎていたのだが、カメラを向けていると、店主と思われるオッちゃんが「カメラで撮りながら、中も見てってや〜」と気さくに声をかけてくれたので、今日は入ってみることにした。
外から見ていると分かりにくいのだが、思ったより奥行きがある。
それも店の入り口に到達するまでに、想像以上に雑多なモノがトコロ狭しと並んでいるのだ。
入り口付近で、ふと目に付いたのが、ヒヨコの置物。
    ぴよぴよ
    ぴよぴよ……
妙にリアルで生々しいヒヨコは、可愛さよりも何か微妙に感じるものがある。
特に並んでいるマンガチックにデフォルメされたニワトリとのツーショットは、例えるならば、日米のコミック誌の違いのような。
とりあえず、お好きな方のために、このヒヨコのアップも掲載しておこう。
    ぴよぴよ
    しっかりカメラ目線で
ヘンテコなものばかりではなく、意外に実用的なものも売っている。
    会議中
この「会議中」のプレートなど、あまりにも普通のグッズ、探してみればいろいろあるかもしれない。
のれんをくぐって中に入ると、入り口までの距離以上に奥行きがある事に驚かされる。
一体、この建物はどうなっているんだろう?
ひとまず、店の様子の一部を掲載しておくが、興味がある方は、是非、ご自身の目で確かめて下さい。
    雑貨屋さん?
    店内から入り口方向を撮影。既にすごいことになっています。
このように、雑多なものから骨董品まで並んでいる店は、あちこちの街に存在する筈だが、どの店にも、独特の個性があり見ていて飽きない。
    えいりあん
    H.R.キーガーの世界もアリマス
そして、気になって買ってしまった「SIANG PURE BALM」。
これはタイガーバームの親戚だろうか?
    爺さんバーム
    トラの代わりにジジイの顔がついています
何に効くかは神のみぞ知る。

とある飲食店の前が、こんな事になっていた。
    風流1
    冬晴れに 縄手で一服 あはれなり

    風流2
    兄弟が 二人で競う 城の坂
店主の趣味が嵩じて、こんな事になってしまうケースは多々ある訳だが、どうやら原因はこちららしい。
    会議中
店頭に置かれた「応募用紙」に記入すると、すてきな作品は店頭に飾られるというものだ。
なるほど、店主の趣味は歌を詠むことではなく、字を書くことだったのか、と思いつつも、ありそうで見たことのないアイディアには感心させられる。
ちなみに、風で飛ばないようにと重石に使われているのがカエルの置物というあたりも見逃せないポイントだ。

さて、本題だ。
気になる食べ物というのは「うどん」。
松本かえるまつりの際、限定「かえるうどん」をメニューに加える「じゅげむ」さんのうどんを食べてみたく思ったのだ。
普段は外から眺めるだけだったうどん屋さん、今日は入ってみた。
というか、あまりに外が寒いので、暖かいものを下さい、と身体が叫んでいる。
    じゅげむ
立ち寄っていない理由の1つに、店内が狭そうだ、という事があった。
外から見ていると、どうも窮屈そうだったので見送っていたのだが、入ってみると、その心配は無駄なものであった。
いや、狭いには違いないのだが、1人分に割り当てられているスペースは思ったよりも狭くない。さらに、建物の高い天井が、窮屈な感覚を緩和してくれているように見える。
    高い天井
    すかーん、と高い天井は気持ち良い
居心地は悪くない。
特に、今日なんぞ、クソ寒い外から入ってくれば極楽だ。
店の名前がついている「じゅげむうどん」を注文しつつ、店内を物色する事にした。
店内は「ココはうどん屋さんデスカ?」と思えるほど色々なモノを売っている。
穀類や調味料など、おそらくこの店で実際に使われているものなのだろうが、品揃えに微妙なこだわりを感じるあたり、ファミレスのレジ周りにある無節操な売店コーナーとは一線を画す。
さらに、試作品である「かえる餅(?)」まで置かれていた。
    ケロモチ
    ケロケロケロとモチカエル
アラレか?色々な形で作られた「カエル」の数々。お店の方が言うには「焼けるまでどんな形になるか分からんからねぇ」との事。
このバリエーションに試行錯誤の後が垣間見える。
その中で、目立っているこいつは妙に可愛らしい。心のツボにストレートに決まる。
    白ケロモチ
    焼き方を変えればパンダとも言い張れる
携帯ストラップにしても人気が出そうな造形をしているではないか。
どうも、ナワテ通りには、普通の市民を装ったアーティストがたくさん紛れ込んでいるらしく、実に勉強になる。
ちなみに、聞くところによると、今日の松本はいつもより寒い、との事であった。
なるほど、愛知県の生ぬるい住人には厳しい寒さであって当然だ。
そんな状況で出されたうどん、ゆっくりと立ち上る湯気が、目から身体を温めてくれる。
    じゅげむうどん
人によっては、こちらの地方の「つゆ」はやや甘辛い感じがするという。
確かに、やや甘味を感じるが、個人的には問題のない範囲の濃度に甘味。むしろ、この寒さの中では、この濃さはありがたい。
すっかり身体が温まり、椅子に座った尻に根が生えた気がしてきた。
寒風が無いだけでも十分な温かさを感じるが、お店の人曰く、天井が高いので足元が冷えてしまう、椅子の上に乗って立っていると温かいよ、と。
この時期、松本のうどん屋では椅子の上に立って食べるナワテ流の新スタイルが確立される瞬間か!?と思って笑ってしまったが、想像するだけでシュールな光景だ。
しかし、高い天井の上の方に暖気が逃げてしまうから、椅子の上に立つと暖かい、という話術に、とてもウィットを感じて好感が持てる。
て言うか、実際に試したのか(笑)
また「お焼き」という食べ物。菓子パンと豚まんの中間のような、中途半端な固さのものしか知らなかったのだが、そのイメージは誤りらしい。
ここで出しているモノは、もっと軟らかく、食べやすい物であった。
冷えたら、オーブンで焼いても良し、レンジで蒸しても良し、との事。
家に持ち帰って、それぞれの方法で食べたが、こりゃ美味いや。
そして、美味いだけじゃなく、カエルの刻印がしっかり押してあるあたり、泣かせるではないか。
    おやき
ちなみに、この高い天井は、逆に夏は涼しくなって良い、との事なので、かえるまつりの休憩所には最適かもしれない。
    天井
さりげなく、アメは食べ放題。こんなところに見られる気配りは、先ほど胃に収めたうどん以上の温かさが感じられる。

ところで、今、このうどん屋さんから見えるのは、こんな風景だ。
    マンション建築中
すっかり取り壊された松本の劇場跡。
ここにはマンションが建つという。

四柱神社の鳥居の前から眺めたナワテ通りは、こんな感じ。
平屋の小屋のような商店が立ち並んでいる。
    ナワテ通り
一方で、30mを超えるマンションが建つと、このような光景になるといわれている。
    マンション
それぞれの赤い矢印は、同じ建物であろう位置を示している。
マンションを建てる権利者には申し訳ないが、あまりにも不恰好だ。
    景観は
確かに、道路ギリギリまで建物があるわけではないから、この工作は意図的に作られたアンフェアな造形ではあるが、それにしても、だ。
かけられた灰色のビニールシートの隙間から覗くと、そこには清々とした水が流れている。
ここは松本城の堀を埋め立てて作られた場所らしく、今でも、その水が流れているという。
おそらく、それは女鳥羽川(めとばがわ)に注いでいるのであろう。
都会人が神田川のようなドブ川に懐かしさを感じるのは結構だが、この清々しい流れの川とは比べ物にならない。
    女鳥羽川
    女鳥羽川とガーガー。のんびり魚を獲ってました。
ナワテ通りから見える山々、そのふもとを流れる清流。
豊田市という片田舎の人間が見ても、うらやましいなと思えるこの光景。
単なる観光客のわがままで言わせて貰うならば、これは崩して欲しくない景色だ。
    やまやま
長野県では、県知事の方針により脱ダムを宣言しているが、それは治水・利水事業に限った事だけなのだろうか。
治水のあり方を問うのは結構だが、城下町の一角の景観1つ守れないのは如何なものか。

門外漢の自分からは、この問題に対峙しておられる方々にメッセージを送るくらいかできないが。
    がんばれ
愛すべきナワテのために。

    ※注)掲載されているお店の順番と実際の位置関係は無関係です。
    各人、足を運ばれた際、色々と散策してお楽しみください。

    【追記】
    何か妙なイベントがしばし行われるナワテ通り。
    今年も2月11日に「がまんカエル大会」が開催されるようです。
      がまんかえるたいかい
    お時間あれば、ブラブラと散策に出かけてみてはどうでしょう。
    ちなみに、昨年の様子の一部はこんな感じです。
    たまたま通りがかったワンシーンなので、全てではありません(笑)

    また、たい焼き「ふるさと」さんの定番「ウインナー鯛焼き」は、焼きたてが一番美味しいです。
    焼き待ちの状態なら、多少待ってでも買いましょう。
    焼きたてをホフホフ言いながら食べると最高!
    (寒空の下、本日実践しました。温かくてよかったです。)
本日の好日度:★★★★★ 「うどん、美味しゅうございました。」